Menu
080-3205-6039 info@wellbegun.jp

MBAを目指す経営者の推薦状作成で気づいた経営者の素質とは?

Startup Photos (1)

経営者の素質を考えるヒント

先日、弊社がお付き合いをさせていただいている会社の経営者の方が、ビジネススクールに通いMBAを取得したい。ついては、入学に際しての推薦状を書いて欲しいという依頼をいただきました。
私は経営者を評するような人間ではないと、最初はお断りしましたが、彼と彼の会社を客観的に見ることができる人間が他にいないということで、渋々ながらお引き受けしました。
ただ、実際に推薦状を作成する中で、どのような会社が成長をとげ、どのような経営者が会社にとって必要とされるかを改めて考えるいいきっかけになったので、この場を借りてそのいったんを書き留めたいと思います。

成長している会社と成長していない会社の違いは?

私は仕事がら、月に十数社の会社の経営者とお話をする機会があります。また、その方たちとのつながりで、経営者同士のコミュニティが広がります。その付き合いの中で、成長している会社とそうではない会社には、それぞれ何らかの共通点があるように思います。
そのうちのいくつかを挙げてみます。私の主観(肌感)のよるところが大きいので、話半分で読んでもらえればと思います。

会社の目標を経営者と社員が共有している

どんな会社にも、『今期の売上を○○万円にしよう』『今月は、新規を何件獲得しよう』『3年後に年商を○○万円にしよう』など、大小さまざまの目標があります。当然、経営者一人ではその目標は達成できませんから、会社全体でその目標達成のために努力する必要があります。方法は会社によって様々ですが、会社全体の目標を各部署や各人に細分化したり、各月や各週に細分化したりして、社員一人ひとりがその目標数字のどの部分を担っているのか、どのような役割を果たすべきかを可視化できるようにし、一人ひとりが自主的に行動することが求められると思います。
ただ、経営者と社員とは、その負っている責任とリスクが明らかに異なります。そのため、社員一人ひとりが経営者意識をもって会社の将来的な目標を語ることには限界があります。加えて、社員がもっとも興味関心をもつのは、自分のお給料ですから、少しくらい会社の業績が傾いたとしても、毎月決まった額が口座に振り込まれている限り一応の満足を得られます。
この状況にみられるように、経営者と社員の間には、会社の目標を達成しようというモチベーションンにギャップが生じることは避けられません。
私が感じるところでは、成長ししている会社は、この「ギャップ」が極めて小さいといえます。
これは、経営者が普段からどれだけ社員の立場に立ってコミュニケーションをとれているか、社員のモチベーションを高めるだけの環境を整えているか、そしてそれに見合った待遇を与えているかといったことに依存するように思います。

たまに、会社の目標設定を誰が主導するべきか? という点を問題にする方がいます。私は、会社の規模によるところが大きいと考えています。
ある程度の規模の会社であれば、会社全体でミーティング・・・なんてことは物理的にも不可能ですし、意味がありません。そういう会社は少なくとも経営がある程度安定し、スタートアップの会社とは違ったフェーズの成長が求められます。このような会社では、経営者が目標設定を主導するべきです。
一方で、スタートアップの会社では、社員が目標設定を主導すべきかといえばそうとも限らないと思っています。
社員は、経営者が一方的に決めた目標では本気になりにくいと思うのです。
私が成長を感じる会社の場合はこうです。
まずは、社員同士あるいは社員一人ひとりに目標を考えさせます。それが経営者が考えている目標より低い場合には、「本気で取り組めばもっと大きな成果が期待できるのではないか」「競合の○○社を超えるためには、もう少し高い目標設定が必要なのではないか」などと何度も何度も社員とコミュニケーションをとります。
そして、社員が「ここまでやり遂げる」と約束した目標が、経営者のイメージする目標と一致したときに初めて会社の目標ができあがります。
このように、経営者と社員とが徹底的に話し合う過程で、経営者の情熱や本気度が自然と社員の中にも浸透していきます。こうなった会社はエネルギーが違います。うまく表現できませんが、社員の中に『やらされる感』がありません。社員一人ひとりが果たすべき役割をしっかりと把握し、社員同士のヨコのつながりが密な上に、上司とのタテの関係にも何のわだかまりも感じさせません。『自立した恊働体』といったかんじでしょうか。
このような恊働体を築き上げるために、経営者には、相当の根気強さと社員一人ひとりに体する気遣い、そしてカリスマ性を内在した人間的な魅力が必要に思います。
なかなかこのような経営者に出会えないのですが、今回推薦状を書いて欲しいという依頼をくださった経営者の方は、まさにこのような恊働体を築こうと努力を重ねている方だと思っています。

経営者が作業に負われていない

社員と経営者の距離が非常に近いために、社員が、自分たちと同じように経営者も作業している姿を見ると、「あ、一緒に汗うをかいてくれてる!」と思い、親近感を覚えます。これはスタートアップの会社によく見られる光景ですが、実際はこういった会社は成長していないのが実感です。
会社の規模にかかわらず、経営者の果すべき役割は、中長期的な戦略の立案、それに基づく戦術の実践です。これらをぬかりなく遂行できない会社は船長のいない船と同じです。そして、これらの役割を果たすためには、経営者は実作業の現場から一線を引く必要があります。
なぜ、経営者が現場にとどまっていてはいけないのかを少し考えてみます。
まず、経営者が現場に立っているのでは、社員の自立性が育たないことが挙げられます。
会社は成長するに従い、重要な意思決定が必要になる場面が多くなります。また、クライアントの数や規模も次第に膨らみ、全ての案件について経営者の目が隅々まで届かないことがあたりまえの状態になります。
このような状況に至っても、1つの案件を処理するために経営者自らが先陣を切って陣頭指揮をとらなければならないというのは、会社が組織として確立されていないことの現れに他なりません。
このような会社は、経営者が何らかの理由で不在になったとき、現場が完全にストップしてしまいます。
逆に、成長している会社の場合はどうかというと、経営者は真っ先に、自分がいなくても現場が回る仕組みづくりに着手します。その分、高度な業務や付加価値の高い仕事であっても、社員を信頼し、それに対してケツ持ちをする。「ケツを持つ」というのは、社員のミスを許容することであったり、新規案件の受注に失敗してもそれが会社にとって決定的なダメージにならないような対策を予め講じていることであったり、社員のしっかりとした仕事に対してはそれ相応の待遇を用意することであったりまします。
経営者の役割は、戦略の立案と戦術の実践にあります。そして、この役割を果たすためには、純粋に頭を使える時間を確保することが必要なのです。

次に、経営者が実作業の現場と一線を引く必要がる根拠としては、経営者の果たすべき責任は社員のそれとは本質的に異なるということが挙げられます。
経営者の役割は、会社の顧客創造や永続性への取り組みを組織立てて戦略的に行うことです。そのため、個人としての成長よりも会社の成長に責任をもつことになります。
一方、社員の責任は、与えられたタスクをこなし、一定の成果を残すことです。そのため、会社の成長よりもスキルアップや勉強といった個人としての成長を必要とします。
したがって、それぞれが負う責任から考えても、経営者は現場での実作業に負われていてはいけないのです。
このことを履き違えて、経営者が現場の先頭で汗を流すことは、一見社員のために身を粉にするいい経営者に映るかもしれませんが、会社組織としてはマイナスです。

成長する会社に必要な経営者とは?

成長する会社とそうではない会社の違いをいくつか挙げてみました。特別目新しいことはないと思います。やはり成長する会社というのは、経営者のビジョンと社員のエネルギーが見事に調和しているように感じます。
私がこれまでお付き合いしたことのある会社で成長してる会社の経営者の要素を箇条書きにしてみます。
・社員とのコミュニケーションに時間を割く
・人としての魅力を備えている
・将来のビジョンを楽しそうに語っている
・自分の行動を客観的に捉え、常に自己を変革しようとしている
・過去の成功体験にこだわらず、常に時流に乗るためのアンテナをはっている。
など。
まだまだ挙げることができそうですが、このくらいにしておきます。
この投稿を書いていて、経営者の素質についてもう少し深く掘り下げて考えてみたいと思ったので、より詳細な分析はまた機会を改めて書いてみたいと思います。

最後に、今回依頼されて作成した推薦状を曝します。(さすがに、社名と個人名は伏せますが・・・)

1、推薦理由をお聞かせください。

私は、A氏が代表を務める○○株式会社(以下「同社」)の法務・マーケティングのコンサルタントとして業務に関与させていただいております。この度、貴院のMBA課程への入学に際し、僭越ながらA氏をご推薦申し上げます。
推薦理由としては、専門職課程で机を並べる他の受講生とのグループワークや彼らとの切磋琢磨の過程において、A氏のこれまでの業界の最前線での実務経験が生きた素材として多いに役立つであろう点、そして、同社で働く社員および同社のクライアントにとって、ひいてはA氏が将来携わるであろう業界にとって、A氏が必要とされる人財になると確信するからです。
前者については、本推薦状の2項・4項で、後者については同4項において詳述いたします。

2、もっとも優れていると思われる点はどこですか。また、そう思われた理由・エピソードもお聞かせください。

A氏のもっとも優れているは、「任せて考える」点にあります。
日々のルーティンから中長期的な経営判断に至るまで、会社の代表者としての業務は多忙を極めます。その中にあって具体的業務の全てをA氏が引き受け方向性を示し、しかるべきゴールにまで導くことは不可能です。例えば新規顧客の獲得のためには、ニーズの把握に始まり、提案を一から組み立て資料を作成し、プレゼンテーションを行うという作業が繰り返されます。同社の規模こそ決して大きくはないので、良くも悪くも、全ての案件についてA氏が手を掛けることが物理的には可能です。
確かに、A氏がそのように振る舞うことで失注のリスクは半減するはずです。それはA氏のこれまでの経験則や知識がなせる技だと思います。しかし、A氏は必ずしも受注するという結果だけに拘泥しません。それは、社員(従業員の意)の成長を阻害し、社員の思考を停止させることを知っているからです。冒頭で「任せて考える」と評したのは、A氏は、社員に案件を任せ、その社員の能力や経験値などを踏まえ穴になり得ることを予め予測し、穴を埋めるための対策を考えることができるからです。社員にとっては大きな裁量を与えられることによる自信とヤル気を起こさせ、一方で失注リスクを最小限に留めるためのセーフティーネットで足下を支えてくれるという大きな安心感をもって業務にあたることができます。さらに新入社員に対しても同様の態度で接していることに懐の深さを感じさせます。
「任せて文句をたれる」という今の民主政治に見られるような愚昧なリテラシーと、「全てを引き受けて背負う」というベンチャー企業の独裁リーダーにありがちなスタンスの中庸を行く優れた思考だと思います。

3、志願者について、もっとも課題である点はどこですか。また、そう思われた理由・エピソードもお聞かせください。

良くも悪くも会社の趨勢がA氏の人脈とカリスマ性に依存しているところが大きく、A氏の具体的な言動なしには会社の成長が望めない点が課題として挙げられます。前項で挙げたように「任せて考える」というスタンスが自立的な社員の恊働体を構成し、将来の会社の成長には不可欠の要素であることは疑いのないところと考えますが、奏功如何はA氏がこのスタンスで社員に接していることの本質を社員自身が理解し、好機と解釈できるかどうかに依存します。つまり、社員の主体的な関与を必要条件とするわけですが、現状の同社にはA氏の意図するところを的確に把握できている社員は皆無に等しいと見ます。
以前、会社の将来性を議題とした社員だけのミーティングが開催され、私も同席させていただきました。A氏の主眼は将来会社が進むべき方向性や社員一人一人の関わり方を考えて欲しい、つまり当事者意識をもって業務に携わるにはどのような会社であって欲しいかということを社員同士で話し合って欲しいというものでした。しかし、その席で出た意見は待遇の改善や自身の業務に関する不満など、主眼とはかけ離れた利己的なものでした。責任とリスクを負う経営者とそれらを負わない社員との間に立場上の乖離がある以上、このような結果になることは致し方ないところはあります。ただ、自立した恊働体の構築を目指し、そこに会社の将来性を見るのであれば、A氏の意図するところをくり返し伝え続け、それが社員一人一人にとって将来設計の具体的ビジョンとして共有できるに至るまでのコミュニケーションが必要だと思います。
A氏の課題として挙げることは不適切かもしれませんが、社員が会社という組織の中で果たす社会的役割が経営者のそれとは根本的に異なること、そしてその役割に依拠する本音は往々にして経営者には伝わりにくいことに想像力を働かせたコミュニケーションが必要に思います。

4、経営学修士(MBA)を取得することによって、本人に期待する点は何ですか。

これからMBAの取得に向け高い志をもつA氏をご推薦申し上げる立場として不適切なコメントであることは承知ですが、個人的な見解としては、MBA保有者というステータスを武器にしないで欲しいということです。
A氏には、これまでの実務経験の中から自然と醸成された勘や雰囲気が備わっています。これは座学では身につけることができない貴重な素質だと思います。また業界の垣根を超えて有する幅広い人脈も何物にも換え難い財産です。そして、すでに「A」という1つのブランドを築きつつあり、クライアントをはじめ彼を慕う会社・ヒトが大勢います。これらはいくらお金を摘んでも私には作ることのできない魅力です。
貴院で学ぶこと、そしてMBAというステータスを取得することはA氏の経営者としての判断にこれまで以上に自信を与え、理論的根拠を確固たるものにすることは間違いないでしょう。そして、同社ひいては業界の発展に寄与することは想像に難くありません。しかし、MBA保有者というステータスはあくまでA氏の魅力を構成する一要素に過ぎません。
僭越ながら私がA氏に期待するところは、MBAの取得過程で改めてA氏自身の魅力を実感し、A氏に期待を寄せる会社やヒトがどれほど存在するのかを再確認して欲しいという点にあります。そして、一会社の経営者という小さな枠にとらわれることなく、今後携わるであろう世界においてその魅力を如何なく発揮できる素地を築くことを願っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です